事業用煙突塗装 実務ガイド

工場やプラントの煙突塗装に関する実務情報サイト。航空法に基づく赤白塗装のルールから、費用相場、足場代の削減方法、ドローン点検、優良業者の選び方まで専門知識を網羅的に解説します。

航空法に基づく「昼間障害標識」とは

この記事をシェアする

航空法に基づく色のルール|煙突塗装の赤白は必ず必要か


高さ60m以上の煙突は、航空法第51条の2に基づき「昼間障害標識」の設置義務があり、赤(黄赤)と白で奇数等分に塗り分ける塗装が代表的な対応方法です。ただし、条件を満たせば赤白以外の色にできる道も用意されています。


昼間障害標識とは何か


昼間障害標識とは、航空機のパイロットが日中に障害物を視認できるようにするための標識です。煙突の場合は塗装による塗り分けが一般的で、上端から下端までを奇数等分(一般に7等分)し、両端を赤とする配色が広く採用されています。


工場の煙突が赤と白に塗られているのは、企業の趣味や慣習ではなく、この法的要請に応えた結果です。したがって塗り替えの際も、現状の色や区分をそのまま再現すればよいとは限らず、設置当初と現行の運用が一致しているかの確認が必要になります。


煙突の高さ基本的な考え方主な対応方法
60m未満航空法の標識義務は原則対象外防食・美観目的で自由に色を選択可能
60m以上昼間障害標識または代替措置が必要赤白の塗り分け/航空障害灯の設置
高層・空港周辺周辺空域の条件により個別判断所管機関との事前協議が必須
※高さだけでなく、空港との距離や周辺空域の状況によって判断が変わるため、最終的な適用可否は必ず所管の航空局・自治体窓口への確認が必要です。

2000年の法改正で「意匠塗装」の選択肢が広がった


2000年の航空法改正により、中光度白色航空障害灯を設置した場合には赤白塗装が免除されるようになりました。これにより、景観条例のある地域や、街並みとの調和を重視する施設でも、企業カラーやアースカラーによる意匠塗装が可能になっています。


実際に、都市部の清掃工場や大学・病院の煙突、再開発エリアのプラントなどで、グレー系・ベージュ系にまとめた塗装や、建物本体と一体に見せるデザイン塗装が採用されています。煙突を「隠す」方向のデザインと、ランドマークとして「見せる」方向のデザインの両方があり得ます。


意匠塗装を選ぶ前に検討すべきコストと運用


色の自由度が上がる一方で、航空障害灯には初期費用と維持費が発生します。判断は塗装費だけでなく、ライフサイクルコストで行うべきです。


  • 航空障害灯本体・電源・制御盤の設置費用
  • 点灯確認や球交換などの定期保守、灯具更新の費用
  • 停電時の対応、故障時の連絡体制
  • 灯具の維持管理を誰が担うか(自社保全部門か、委託か)
  • 景観条例・自治体との協議、近隣説明の要否
「赤白をやめたい」という要望から始まった検討が、維持管理体制の見直しにまで及ぶことは珍しくありません。塗装のタイミングは、標識方式そのものを見直す良い機会でもあります。

煙突塗装に使われる塗料の種類と選び方


煙突塗装では、部位の温度条件と素材に合わせて塗料を選びます。高温部には耐熱塗料、常温部には重防食仕様、コンクリートには中性化対策を重視した塗材、という使い分けが基本です。


耐熱塗料


排ガスや排熱の影響を受ける部位には、高温でも塗膜が変色・剥離しにくい耐熱塗料を使います。シリコーン樹脂系の耐熱塗料は耐熱グレードが段階的に用意されており、最高600℃程度まで対応する製品もあります。


耐熱塗料は「高性能な万能塗料」ではなく、高温に特化した塗料です。耐候性や防食性は一般の重防食塗料に劣る場合があるため、常温部にまで無条件で使うのは合理的ではありません。表面温度の実測データに基づいた塗り分けが、コストと耐久性の両立につながります。


重防食・防錆塗料


鋼製煙突の常温部では、変性エポキシ樹脂系の錆止めを下塗りに用い、中塗り・上塗りにポリウレタンやふっ素樹脂系を重ねる重防食仕様が標準的です。塩害地域や化学プラント周辺など腐食環境が厳しい場所では、仕様のグレードを上げる判断が必要になります。


塗料系統主な用途部位特徴検討時の注意点
変性エポキシ樹脂系(下塗り)鋼製煙突全般付着性・防錆性に優れる紫外線に弱く上塗り必須
ポリウレタン樹脂系(上塗り)一般環境の鋼製煙突コストと耐候性のバランスが良いふっ素より耐用年数は短い傾向
ふっ素樹脂系(上塗り)長期耐久を求める大型煙突耐候性が高く塗り替え周期を延ばせる単価は高いが仮設費を考えると有利な場合も
シリコーン樹脂系耐熱塗料高温部・頂部周辺高温での塗膜安定性耐熱グレードの選定と下地処理が重要
中性化抑制形・防水形塗材RC造煙突雨水遮断と中性化の遅延下地補修とセットで計画する

環境配慮型塗料(弱溶剤形・鉛クロムフリー)


企業のESG経営やSDGs対応の流れを受けて、プラントや工場では鉛・クロムなどの有害重金属を含まない防食塗料、そして臭気やVOCを抑えた弱溶剤形塗料の採用が増えています。


環境配慮型を選ぶ際は、次の観点で仕様書を確認すると実務的です。


  • 鉛・クロムフリーであることが製品資料に明記されているか
  • 弱溶剤形か水性形か、近隣への臭気配慮が必要な立地か
  • 従来の強溶剤形と同等の防食性能が期待できる仕様か
  • 旧塗膜に有害物が含まれる場合、ケレンかすの飛散防止・産廃処理をどう扱うか
  • 自社の環境方針・調達基準に整合しているか
特に旧塗膜に鉛系錆止めが使われている古い煙突では、ケレン時の粉じん管理と廃棄物処理が費用・工程の両面で影響します。事前の塗膜分析を見積前に行うかどうかも、業者と相談すべきポイントです。